医師の説明を聞くとき
Doctor's explanation
医師の説明を聞くとき

2003/6
主治医からの説明(カンファレンス)を受けるとき、私は必ずメモをとりました。これはごく当たり前のように思うのですが、意外とメモをとっている方が少ないようです。ただメモを用意していくのではなく、あらかじめ質問したい事柄を書いていくといいと思います。

私は初回カンファレンスで主治医へ尋ねたいことを下記のように書きました。

@ 病名(出来るだけ詳しく)

A 現在の症状(血液検査のデータ、感染などを併発していないか?)

B 治療方法(その治療方法に決定した理由、他の治療方法)

C 治癒率(この病院での症例数と治癒率、全国の症例数と治癒率)

D 副作用(化学療法により考えられる副作用の諸症状と対処法)

E 患者サイドの注意点(家族が出来ること、してはいけないこと)

F セカンド・オピニオンについて

日時と同席して下さった医師名と看護士名を記入して記録として残しておくと良いと思います。

初回の説明は特に充分な時間を取って丁寧に話しをして下さるはずです。分からないことは聞き返しても正確にメモを取り、把握することは大切なことです。(医学専門用語など初めて聞く言葉の意味が分からなかったりすることが誰でも多くあります。)時には「矛盾しているなぁ〜」と感じることもあるかと思います。そんな時は遠慮せず、率直に尋ねると不足無く答えて下さいます。
ここで、私が感じたことは「あえて質問しないと聞かされないこともある。」ということです。聞けば必ず答えて下さいますが、患者サイドが質問をしなければ「不明な点は無いのだな?」と安心されてしまいます。また、家族は患者と同席してカンファレンスを受けるのを好む場合と、そうでない場合もありますよね。その点(患者と同席が良いのか、悪いのか)をあらかじめ医師へ伝えておく必要があると思います。
あからさまに全てを患者へ伝えるのが良いことなのか、そうでないのか…、そこは考えが分かれるところでもあり、患者の年齢や性格にもよると思いますので。(私は当初Shinを同席させることには賛成でしたが、具体的な数字(○%とか○割とか)はShinの前で言わないでほしいと医師へ願い出ました。)



二回目以降のカンファレンスでお尋ねした事柄

@ 治療の経過(理想的な経過をたどっているのか、そうでないのか?)

A 治療薬の内容(薬剤名、量、期間)

B 各検査の結果(データ)

C 今後の治療内容

カンファレンスとあえて場を持たなくても(立ち話程度でも)医師とのコミュニケーションは多く持つようにして、書き留めておくと良いと思いますが、時間を掛けて説明を受けたい場合は必ず事前に約束をすることも大切なエチケットですよね。

医師の話に出た些細な言葉の意味が分からず、(後々「なんだったのだろう〜?」と思うことが、私はありました。)看護婦さんへ聞いたり、調べたりしても、どうしても理解できなかったら「先生が先日お話して下さった○○とはどのような意味なのでしょうか?」と遠慮せずに聞くことをお薦めします。私が記録を残していることを知った主治医は分かりやすく説明してある記事データなどを見せてくれることもありました。

医師は多くの患者さんを抱えていますので、いつも充分な時間を掛けて説明をしてくれるとは限りません。できるだけ効率よく質問することに心掛けると良い関係が保たれるように思います。

治療に関しては専門的で理解困難な問題もたくさんあります。重篤な場合などは家族も気が動転していて説明をされてもまったく頭に入らないこともあるでしょう。そんな時は録音機(最近はとても小さな機械もありますよね。)を使うのも一つの方法だと思います。

最近はインフォームド・コンセント(医師の説明と患者の同意)がしっかりなされていると感じますが、“医師への遠慮”という大きな壁が拭い去れない家族も多いと思います。しかし、落ち着いて医師の説明を受けて、患者も家族も納得し、大きな不安を抱かずに治療へ臨んでほしいと思います。




2004/8追記

この文章を書いてから一年数ヶ月が過ぎました。実際に闘病(看病)していた時には知らなかったこと、改めて感じたことなどを追記しておきたいと思います。

インフォームド・コンセントを医師からの一方的な話(説明)に家族がただ「ハイ」と言うことのように捉えられているように感じることがありました。なぜ、そのように患者(家族)が受け止めてしまうのでしょうか?

インフォームド・コンセントとは第二次世界大戦中にナチス・ドイツの科学者や医者達が強制収容所や特別研究所などでユダヤ人やポーランド人などを使って動物実験と同じように残虐な人体実験を行っていたことが源で、ドイツ降伏後、ニュールンベルク裁判で、「人は本人の同意なしには、いかなる人体実験の対象にもされない!」という人間の基本的な人権を守るためニュールンベルク綱領が採択されたのだそうです。
そして1950〜1960年に掛けてアメリカでは、患者が知らないうちに開発中の新薬や放射線の人体実験をしていた事実が発覚、社会的に厳しく批判された事件もあって、その後、インフォームド・コンセントは世界医師会の宣言などを経て、患者の権利を守るために確立され、欧米の主な国々で1970年代から医療界に定着してきたそうです。 骨子は医師の診察の義務と守秘義務、患者の真実を知る権利、患者の自己決定権と同意権、そして、医師の説明義務で構成されている、患者の人権を守るための法的概念です。決して医者が患者から同意をもらう行為のことではありません。

より良い医療のためには患者(家族)の積極的な協力が望ましく、医師の説明を理解するための知識も必要です。患者がつらい治療で苦しんでいる時は家族や友人が、その知識を得て、医師の説明を患者が理解できるように支援してあげる体制(知識のサポート)も必要なのではないでしょうか?

最近読んだ本の中に医師からの説明についての興味深いアンケート調査結果がありました。医師へ「あなたの患者さんは、あなたからの病状等の説明をよく理解できていると思いますか?」という質問に対して80%の医師達が「YES」と答えたのに対して、患者へ「あなたは主治医からの病状説明をよく理解できましたか?」の質問に20%の患者しか「YES」と答えなかったそうです。
つまり、大半の医師は「患者は理解している」と思っているけれど、大半の患者は「よく解らない」と思っているのですよね。これは一概に医師の説明不足だけだとは私は思いません。
この結果を知って、私は「患者は説明が理解できない」のではなくて、それ以前の問題として、治療(病気)に対しての基礎的な知識がないので「理解のしようがない=意味がわからない」のではないか?と感じました。ある患者さんは「知ることが怖い」のかも知れません。また「知る方法がない」のかも知れません。しかし、自分の“いのち”に関わることだとの自覚が希薄なのではないでしょうか?それでなければ、はなから諦めているのでしょうか?

日本人は医師に対して「私は医学のことは何も分からないので、先生へ全て、お任せしますので、よろしくお願いいたします!」という患者さんが多いようですが(そう言うと医師が任せられたことを喜ぶと思っている患者さんがいるようです)、この「お任せ医療」ではインフォームド・コンセントは成り立たず、いつまでたっても患者の人権が守られた医療にはなりません。つまり患部しか診ない医者ばかりを増やしてしまう恐れがあります。
そんな時、Drは「患者さんも勉強して下さいね、私たち医療者も頑張りますので」とひとこと言ってほしいなぁ〜と思います。

尊敬し信頼できる素晴らしいDrに診てもらいたいなら、患者自身も医師の説明が理解できる程度に自分の病気を知る努力をすべきではないかと思います。

患者と医療者が情報を共有でき、理解と信頼がより深まり、共に成長して、充実した医療が日常となることが、良い治療へと繋がっていくのではないかと感じているこの頃です。



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