感染管理

移植患者に対する感染管理


造血幹細胞移植に関しての感染管理は患者にとって非常に重要な問題だと思います。

“幹細胞移植”が必要な患者同士の話の中でも
無菌室(移植病室)が各施設(病院)によって環境がかなり違い
無菌食(加熱食)もスタッフの感染対策への考え方も違いがあると日頃から感じていました。


2003年11月の金沢でのフォーラムで、森 慎一郎先生の感染管理についての講演がとても勉強になりました。

患者が知っておきたい留意点や
サイトメガロ・ウイルスについてや、
無菌室(移植病室)の環境や
施設のスタッフの方々への注意点や
お見舞いについて等が

森先生も委員として作成に携われた
『無菌化…移植後早期の感染管理』としてPDFで公開されています。

日本造血移植学会HPの中の
『造血幹細胞移植に関するガイドラインについて』
http://www.jshct.com/about_guideline.html


医療従事者の方々向けの内容ではありますが、
患者&家族にもとても参考になりますので、是非読んでみて下さい!!





= 周囲に知ってほしいこと&患者が覚えておきたいこと =


【手の洗いかた】
手には多くのバイ菌がいます!


1、水で手をぬらし石鹸をつける

2、指・腕を洗う(特に指の間、指先を30秒ほど洗う

3、石鹸を20秒ほどよく洗い流す

4、よく水洗いをする

5、ペーパータオルでふく




【面会者へのお願い】
外部から菌が入らないように、感染対策の協力をして下さい!


・感染する疾患(インフルエンザや帯状疱疹など)に罹っていた人や
ワクチンを接種した人、風邪の症状がある人は絶対に控える

・手洗いの指導などの感染予防策の徹底が不行き届きになるので大勢では面会へ行かない

・清潔な着衣を着用し、長い髪は束ね、香水や整髪剤などの香料も控える。

・病室には面会者個人の所持品はできるかぎり持ち込まず、
移植病室・病棟内での面会者の飲食は控える

・患者のベッドに座らない。

・室内の設備および物品に必要以外は触れない。


・患者が子供の場合はダッコしたり直接的に接触する事が多ので充分気をつけ、
エプロンとマスクを使用し、分泌物や排泄物に触れた場合の手洗いは十分に行う。


・面会の時間・回数等は患者の病状・精神状態で決定している事が望ましいので
看護師へ尋ねてから面会をするよう心掛ける。




【補食について】
食品から感染しないように注意!


・缶詰やレトルト食品は缶の形が変化していないか表面に傷がないか確かめ
水洗いをしてから開封し食べ残したものは破棄する。

・カップ麺等は沸騰した湯を用いる。

・ブリックパック(牛乳・ジュース)やアルミパック(プリン・ゼリー)は
無菌充填・加熱殺菌の表示があるものを選びぶ。

・果実は新鮮で傷のない物で皮をむけるものなら可。
流水で十分に洗浄し、食べ残しは食しないこと。
ナイフも使用前に流水でよく洗浄する。

・飲料用の缶・瓶・ペットボトルは開封後24時間以内に処分する。
(沸騰したお湯で入れたお茶・コーヒー紅茶は安全)

・輸入されたミネラルウォーターは製品の滅菌工程がはっきりしないため
飲料水は国産品のみ可。

・アイスクリーム・シャーベット・氷は個別密閉包装されているものを選ぶ。

・調理したものについては、家庭で清潔に調理した物を2時間以内で食べるようにする。

・調味料(醤油・ソース等)は個別パックのものを一回ずつ使い切る。



《避けるべき食品》

・生の肉・魚(刺身)・寿司
・ドライフルーツ
・調理後2時間以上経った食品
・発酵食品(生味噌類)
・煮沸していない漢方薬
・カビを含んだチーズ
・アルファルファ等豆の種の新芽
・ラズベリーのような表面の粗い生のフルーツ
・期限切れのすべての食品
・生の木の実
・減塩の梅干し
・自宅で漬けた漬物
・グレープフルーツジュース



【病室の環境について】

≪移植病室=無菌室について≫

・日常的な掃除でアルコールなどを使った特殊な掃除は不要

・日常的な汚れの除去は必要埃をきちんと除くこと

・LAFやHEPAフィルターの使用は不可欠

・病棟周囲に工事や修繕などがあるときは病院におけるアスペルギルス胞子が
著明に増加する為アスペルギルスの感染を引き起こす可能性が高いので
LAFやHEPAフィルターの使用が不可欠

・6ヶ月で2倍以上のアスペルギルス症の発症があれば感染対策のための
環境評価を行う(換気システム)



≪同種移植の病室に「ついて≫

・LAFやHEPAの装備した移植病室での管理が必要

≪自家移植の病室について≫

・LAFやHEPAの必要はなく一般病室で可能
しかし好中球減少が蔓延しアスペルギルスの病院感染の危険性が
ある場合や病棟周囲で工事が行われている時にはHEPAフィルターや
LAF付きの病室に入室させるべきである。




【患者について】

・移植患者は移植中も移植後も毎日シャワーや入浴を行い
皮膚の刺激の少ない石鹸を使用
不可能な場合は清拭等で全身の清潔を保つよう留意する。


・感染の侵入口となりうる会陰・肛門周囲や静脈ルート刺入部は
徹底的に清潔にすると共に乾燥させるようにする。

・膣の刺激を避けるためにタンポンは使用しない。

・直腸体温計、浣腸、座薬、直腸診は皮膚や粘膜の破損を防ぐため可能な限り避ける

・女性は尿道口が便によって汚染されないよう会陰前方から後方に拭き取る。

・移植前に口腔内の状態を改善しておく。
しかし、必ずしも抜歯は必要としない

・患者が検査診療の為、病室から出る場合はマスクの着用を推奨する。

・人込みを避け待合室で長時間待つ事は避ける。